PROJECT STORY
STORY 01
マーケティング本部
楽曲制作チーム
ディレクター
クリエイティブ制作本部
AR配信チーム
ディレクター
マーケティング本部
楽曲/ライブイベントPRチーム
楽曲担当
クリエイティブ制作本部
モーションキャプチャーチーム
エンジニア
アーティストによる一発撮りのパフォーマンスを鮮明に切り取るYouTubeチャンネルとして2019年11月15日にローンチし、現在チャンネル登録者数は879万人(※12/26時点)。日本のYouTubeチャンネルのなかで音楽ジャンルでは最多登録者数となり、最速で800万人を達成している。
2023年3月に東証グロース上場を果たすなど、成長の勢いを止めず変化しつづけるCOVER。その勢いと変化のスピードから、COVERでは「時代が変わる瞬間」に立ち会うことがある。「ホロライブ」所属タレント星街すいせいの「THE FIRST TAKE」出演プロジェクトはまさに、多くの人が時代の変化を感じたプロジェクトの一つだ。
「THE FIRST TAKE」といえば、アーティストの一発撮りで有名なYouTubeチャンネル。音楽ファンはもちろん、幅広い人々が一発撮りならではの生々しさや緊張感を楽しんでいるが、そこにVTuberが登場したのは初めてのこと。星街すいせいを支え「史上初」を築き上げたのは、COVERの「星街すいせい/THE FIRST TAKE」チームのメンバーたちだ。
星街すいせいの2021年9月の1stアルバムの反響を見て、すぐに「ピンと来た」と話すディレクターのM。はじまりは、COVER社内での雑談からだった。「THE FIRST TAKE」出演を目指したい、と自然にアイデアがまとまっていったという。「彼女の歌声をVTuberファンという枠を超えて届けたい、と社内でも話をしていたところ、楽曲を発信する場所として、『THE FIRST TAKE』がすぐに挙がりました。しかし当時、VTuberはまだ「アーティスト」として世間から認識されていない状況でもあり、チャレンジングなオファーをすることになりましたが、絶対に実現させたいと考えていました。」
新卒入社でこのプロジェクトに参加することとなったFは次のように話す。「大きなインパクトのあるプロジェクトだったのにも関わらず、入社数ヶ月の私でも自分のアイデアを話すことができたり、『やってみる?』と任せていただく場面も多くあったことは、入社して本当に良かったなと思います。プロジェクトの内容もチャレンジングでしたが、私にとっても挑戦の毎日でした。」
VTuberという括りを飛び越え、ひとつの音楽として星街すいせいの楽曲を届けたい。VTuberを知らない人にも、知ってほしい。そんなMを中心としたメンバーの自主的な働きかけから、星街すいせいの楽曲「Stellar Stellar」での「THE FIRST TAKE」出演を猛アタック。VTuberが初めて出演するという企画のインパクトもあった、と話すM。 「THE FIRST TAKE」初出演に向けて、プロジェクトは加速し出す。
Mがプロデュースに奔走できたのは、それを支えるメンバーの存在があったからだという。VTuberの出演を技術的にどのように実現するのか、緻密な検討を重ねていたのは、クリエイティブ制作本部AR配信チーム ディレクターのYだ。
Yは当時をこのように振り返る。「最初にMさんから相談をもらったときは、難易度の高い挑戦になりそうだと思い実現方法を検討しました。でもCOVERならなんとかできるはず、と思っていましたね。少し経ってから本当に実施が決まったので、『え、本当にやるの!?』と驚きながら、本格的に挑戦が始まりました。やるならトップクオリティを目指すしかないです。COVERのスタジオで『THE FIRST TAKE』のモノマネをしてみた、みたいな見え方だけは絶対にしたくない。自然な、他の出演アーティストさんのような登場を実現したいと思いました。」
Yのいう「自然な登場」はCOVERにとって今回、大きな挑戦となった。
「THE FIRST TAKE」の収録は、白いスタジオにマイク一本が置かれた独特の世界観と音響を守るため、指定の音楽スタジオで行われる。一方COVERの収録は普段、VTuber仕様の「モーションキャプチャスタジオ」で行われており、そこにはVTuberの動きやしぐさを実現する、モーションキャプチャに特化した様々な機能が備わっている。つまりその環境は「THE FIRST TAKE」収録スタジオとは大きくかけ離れている。
モーションキャプチャ自体は映画やゲームに使われる技術と同じだが、映画やゲームではCGの世界に実写の俳優などを映すのに対し、今回のプロジェクトではまったく逆の「現実世界への、CGの出現」を実現。試行錯誤しながらノウハウを積みあげることからスタートし、実写とCGを合成するシステムを新たに作るなど、すべてを「THE FIRST TAKE」仕様にオリジナルに改造していくことに挑んだ。「本当にこの数ヶ月で実現できるのかなとプレッシャーを感じながらも、そんな挑戦に取り組めることにワクワクもしていました。」とNは当時の日々を振り返る。
またMVなどの映像作品では通常、モーションキャプチャは何度も調整を重ねてつくり込みをしていくが、今回は企画の性質上、文字通り「一発撮り」が求められる。この点でも通常とは真逆のことが必要だったと、モーションキャプチャエンジニアのNは話す。「モーションキャプチャは専用スタジオで何度も調整してじっくり作るのが普通なので、外部環境で一発撮りというのは前代未聞です。そんなプロジェクトに新卒の自分が関われるなんて、入社早々いろんな意味で信じられませんでした(笑)。収録するスタジオに、私は事前にモーションキャプチャの機材を持ち込む事前検証から担当させていただき、PCや消費電力などの計算をして、事前の検証を重ねることで、今回のためにできる限りの調整を施しました。」
そして収録当日。他の出演アーティストと同様に、「本当に」一発撮りが行われた。
星街すいせいの「THE FIRST TAKE」を視聴すると、あまりにも自然に、その音楽と世界観にあっという間に吸い込まれる。てくてくと歩いて登場し、マイクをセットしてヘッドホンを装着するしぐさ。そのヘッドホンの、精巧さ。右手が実物のマイクの後ろに隠れ、左手はマイクの手前になる、前後関係を処理する「オクルージョン」と呼ばれる技術を用いた演出がリアルタイムで行われるなど、そこにはCOVERの技術力が結集されていた。
当たり前に、自然な歌う姿を実現することで、星街すいせいの歌声に注目してほしい。それはチーム全員、共通の強い想いだったとMは語る。「このコンテンツはVTuber『なのに』すごい、と思われたくはありませんでした。一つの音楽として純粋に楽しんでほしい。そう考えたら、登場時に喋ったりVTuberらしい動きをしたりはせずに、いきなり歌い始めるのが良と思いました。」
また、Yは次のように話す。「今までの『THE FIRST TAKE』と同じように撮影できることを心がけました。あくまで見て欲しいのは技術ではなく楽曲なので、自然な歌う姿を追求して、いつも通りに撮影するとカメラに星街すいせいが映るという魔法をかけることにしました。」
Yたちがかけた魔法によって、ひとつの時代の変化が訪れたと言っても過言ではないかもしれない。
封を切ってみれば、プレミア公開の同時接続数が16万以上、動画の再生は1000万回以上。驚異的な反響を得ることができた。PRチームでは、SNS発信にはじまりテレビ取材、メディアインタビューの対応など、反響数とともに対応に追われていたとFは話す。「VTuber初という価値の高さは、伝え方に気をつけて大切にしていました。YouTubeの再生数はどんどん伸びていったので常時チェックして、どのタイミングで発信を打ち出すか見計らっていました。」
チームメンバーの狙い通り、「THE FIRST TAKE」の動画を通してVTuberを初めて見た人、今までVTuberとは距離があったけれどもしっかりと視聴した人など、多くの人に新たにCOVERのエンターテイメントを楽しんでいただくことができた。なにより、「アーティストとしてすばらしい」という声が多かったのは、星街すいせいの歌声に注目してもらえ、COVERの技術力によって自然に一人のアーティストとして認識してもらえた、ということだ。
「VTuberというと若年層のイメージがあるかもしれませんが、50代や60代の方にも聞いていただくことができました。『THE FIRST TAKE』によって幅広い層から認知されたと思います。」と、Fは話す。またYは「『すいちゃん居る!』というコメントが印象深いです。映像の中のキャラクターが、実在する人物として多くの人に認識されていて、そういう感動を支えられてよかったです。」と語る。
VTuberが音楽番組に登場し、一人のアーティストとして世の中に認知される、歴史的瞬間を実現させた本プロジェクト。「前例のないこと」の実現を支えるのはいつも、果敢に仕掛けるCOVERのメンバーたちだ。
「COVERに入社してからの数年間で、今回は最も大きなチャレンジでした。楽曲チームと技術部門はこれまで、あまり絡みが多くありませんでした。でもいろんな可能性があることが今回わかって、すでにいくつか新たな構想も持っています。」とMは話す。彼らの「自ら仕掛ける」プロジェクトは、今後も増え続けそうな気配だ。
「はじめから『できない』と言うメンバーを、COVERでは見たことがないと思います。『チームで話し合って、なんとかしよう』、いつもそんな空気が自然と生まれています。もちろん結果的にはできなかったこともありますが、その挑戦自体に意味があると思うんです。そこで必ず何か、次につながる発見や学びが生まれますから。」とYは言う。
「このプロジェクトでは改めて、様々なバックグラウンドを持つCOVERメンバーの知恵の結集力に驚きました。私は入社1年目なので先輩方の仕事ぶりや経験を見て『悔しい!』と思うことも多かったです。私がスケジュールに追われて焦っているときも、先輩方があっという間に助けてくれました。チームで仕事をすると、一人では成し遂げられないこともできるんだ、と実感する日々です。」とFは話す。
「できない」という言葉が社内で聞こえないのは、こうしたチームでの連携が当たり前となっているからなのかもしれない。挑戦することは、必ず自分やチーム、COVERへと還元されていくことが、メンバーの身体にはカルチャーとして染み付いているのだろう。
入社数週間でもすぐにプロジェクトに参加できたことについて、Nは次のように振り返る。「今思えば入社当初は、全体像をわかっていなかった部分もあると思いますが、自然と先輩方の輪に入れたことで、段々とプロジェクトの全体像や他部署とのつながりなど、輪郭も理解していけました。入社直後から大きなプロジェクトに関われるワクワク感はありましたが、全体像が見えてきた今はまたちがったワクワクやモチベーションになっていると思います。」
新しいことに対してワクワクする気持ちが、COVERの成長スピードを加速させている様子が伺える。「技術も機材も、常に新しいものが登場し続けています。それをどんどん試せる環境があるのが、COVERの気に入っているところの一つです。機器の導入ひとつでも、会社のカルチャーが大きく出るのではないでしょうか。COVERはいち早く、新しいものを取り入れてチャレンジしていくのが好きで得意な人が集まっているので、新しい人もモノも、どんどん入ってくるんだと思います。」とN。
そして、Fはいう。「COVERだったら、日本だけでなく海外にもエンタメを広げられる、と思って入社を決めました。実際、日本の楽曲だけでなく海外の楽曲を担当することもあり、期待以上に幅広い業務に携われている実感があります。挑戦しようと思えばなんでもできる大きな環境なので、自分を見失わないように、意志をしっかり持ってチャレンジを続けていきたいです。」
メンバーたちの果敢な挑戦によって、COVERはこれからも新境地を切り拓いていく。